【休眠制御因子Xをターゲットとした新規抗結核薬の開発研究】
結核は、エイズ、マラリアと並ぶ三大感染症の一角であり、依然として人類にとっての脅威の感染症です。原因菌は抗酸菌の一種である結核菌であり、世界人口の1/4にあたる17億人の潜伏感染を発生母体として、年間約1,000万人に新たに結核を発症させ、そして年間160万人以上の尊い命を奪っています
(WHO Global Tuberculosis Report 2018)。現在、抗結核薬としてイソニアジド等さまざまな薬剤が使用されていますが、結核菌は休眠して薬剤の標的代謝を停止させる能力を有するため、既存薬剤による治療は困難を極めます
(図1) 。このような状況の中、共同研究者である新潟大学医学部細菌学研究室の松本壮吉先生 (HP) は、休眠制御因子X (図2) が結核菌の休眠を誘導する鍵分子であること突き止め、さらには、休眠誘導には休眠制御因子Xの他にも遺伝情報発現系や代謝系に属する様々な分子が関与することを明らかにしています。
図1 結核菌の感染と休眠 図2 休眠制御因子Xの立体構造
本研究では、休眠制御因子Xならびに遺伝情報発現系や代謝系がどの様に関与して休眠が誘導されるのか、 その分子メカニズムを、生化学的・分子生物学的解析、およびX線結晶構造解析により原子分解能レベルで明らかにすることを目指しています。また、分子の立体構造情報を基に結核菌の休眠能や薬剤耐性能を奪う新規抗結核薬の開発も目指しています。なお、本テーマは新潟大学医学部細菌学研究室の松本壮吉先生 (HP) との共同研究で行っています。