ものを創る仕事への憧れ

世の中には、ものを創る仕事というのがある。作るでも造るでもなく創る。例えば、小説家、絵描き、作曲家など、自分の中から湧き出てくるイメージを作品(もの)にする仕事。実はそういう仕事をする人になりたかった。理由はそれが一番かっこいいと思っているから。

思っただけではなくて、子供の頃から絵を描いたり、10代になると文章を書いたりを少しずつだけど続けていた。どちらも楽しくはあるのだけれど、自分の中から書きたいものや描きたいものは出て来なかった。ただただ、既にあるものをそれらしく真似るだけ。それで創る人になるのは諦めた。自分には書きたいものも描きたいものも、まるで無いんだと気付いたから。

それでも憧れだけは40年たった今も抱えている。創る人は、掛け値なしに凄いと思う。で、自分にとって科学者とは何かという話になる。科学者は何かを創るわけではない。自然が既に創った世界を観察して何かを発見する仕事である。その発見するという営みが自分は何よりも好きなので、何十年も続けてきた。それはとても楽しい時間だった。

キャリアも残り少なくなってきたが、いまだ創ることへの憧れはなくならない。糖鎖シーケンサーの開発というテーマは、もしかすると創ることへの最後の挑戦(あがき)なのかもしれない。