Nishikawa Lab

研究内容


真核生物の細胞内には、様々な細胞小器官(オルガネラ)が存在し、それぞれが固有の構造と機能を有しています。有性生殖の過程では、オルガネラの形や機能が大きく変化します。私たちは、有性生殖のメカニズムをオルガネラダイナミクスの観点から明らかにすることを目指して研究を行っています。現在は、遺伝情報を格納するオルガネラである細胞核の融合に着目して研究を進めています。

細胞核の融合と有性生殖

受精の際には、精子や卵といった配偶子が融合してできた接合子の中で、両親由来の核が融合します。核は2枚の生体膜(核外膜と核内膜)からなる核膜で囲まれており、核膜は核融合の障壁となっています。哺乳動物では、最初の体細胞分裂の際におこる核膜崩壊に伴って両親由来の核が融合します。一方で多くの生物種では、まず核融合が完了しその後に体細胞分裂が開始するため、核融合の完了には核膜の融合が必須です(図)。このような核膜融合は、有性生殖過程では効率良く進行しますが、体細胞同士が融合しても滅多におこりません。私たちは、有性生殖過程で効率の良い核膜融合がおこるメカニズムについて、出芽酵母やモデル植物を用いて研究を進めています。詳しくはこちら
Nuclear fusion

現在の研究テーマ

1.核膜融合のメカニズム

出芽酵母やモデル植物シロイヌナズナの変異株を用いた分子遺伝学的アプローチによって有性生殖過程の核膜融合にあずかるタンパク質を同定してきました。現在は、ライブイメージング解析、構造生物学的アプローチ、配偶体特異的遺伝子発現誘導系やケミカルバイオロジーなどの新たな手法を用いて、核膜融合のメカニズムの解明を目指して研究を進めています。詳しくはこちら

2.受精とカップルした核融合の意義

私たちは、有性生殖過程の核融合に欠損を示すシロイヌナズナの変異体では、胚乳形成が異常となるため種子が死ぬことを見つけました。胚乳形成過程のライブイメージング解析の結果、受精とカップルした精核融合が、精細胞由来の遺伝子の発現と正常な胚乳形成に重要な役割をはたしていることを明らかにしました。詳しくはこちら

3.核融合機構の進化多様性

これまでの研究によって、酵母と植物という進化的に離れた生物でも、有性生殖過程の核膜融合のメカニズムが保存されていることを明らかにしてきました。シロイヌナズナを含む被子植物では、花粉管から放出された精細胞と卵細胞の間で受精がおこります。これに対して、コケ植物などでは、精子と卵細胞が受精します。このように、受精の過程には多様性がみられますが、核融合機構にも多様性がみられるのか、進化的な観点からの研究を進めています。詳しくはこちら